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羽生善治九段の「美しい手」とは、AIが美しさの基準を変えつつある

昨日の記事で紹介した『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周)には、将棋界の第一人者である羽生善治九段の言葉が引用されている。引用元となっている「捨てる力」は、2010年11月出版の「羽生善治の思考」を再編集・文庫化したものだという。私は、この引用文が気になって仕方なかった。将棋における「美しい手」とは、どういう手なのだろうか。その美しさがわかるようになれば、将棋が強くなれるのだろうか。

洗練されるとはどういうことか。それは、無駄をなくすること。完全に無駄がなくならないと絶対に美しくはなりません。美しい手を指す、美しさを目指すことが、結果として正しい手を指すことにつながると思う。 

「捨てる力」羽生善治

羽生九段が史上初の七冠独占を達成した1996年に、ある将棋メディアが全棋士を対象に「プロ棋士がコンピュータに負ける日はいつ来るか?」というアンケートを実施した。多くの棋士が「そんな日が来るとは思えない」と回答する中で、羽生九段は「2015年」とはっきりとした数字で答えた。その予言は、ほぼピタリと当たったことなる。羽生九段は最近の対談で、AIによって囲碁や将棋の世界では「美しさ」の定義が変わってきている、と語っている。

藤井聡太七段は、研究に将棋ソフトを積極的に取り入れていることで知られるが、AIが指す将棋の特徴を居玉でも優勢になる形をひねり出してくる、と表現している。玉を固めて安全性を高めることが優勢につながる、それが「美しい」形とされてきたが、AIはその基準を変えつつある。羽生九段は、時の流れで評価や基準が変わると知ったうえで、棋譜の美しさを感じられるようになれば、将棋が強くなってきたという意味だ、とも言っている。

タイトル戦がネット中継される際に、将棋ソフトが示す候補手が紹介される機会も増えた。観察していると、受けた方がよさそうな局面でも、細く見える攻めの手を最善と考える傾向があることに気づいた。それが、AIの提示する新しい「美しさ」ということなのだろう。時代の変化に対応するには、時には記憶や経験も意識的に捨てることが必要、それが羽生九段のいう「捨てる力」であり、彼の美意識なのだと今は自分なりに理解しておきたい。