225オプションで億トレーダー(仮)になる目論見書

オプションの投資手法を学んで、億トレーダー(仮)を目指そう!

含み益になったプットオプションをより有利に利益確定する方法

ついに株式市場は10連休に突入した。4月25日に購入したプットオプション(5P21875)が思惑通りに含み益になったものと想定して、連休明けにどう利益確定するかイメージトレーニングしておこう。利益確定って、買ったプットを売るだけじゃないの、と突っ込みが入るかもしれない。オプションは、他の投資商品(225先物)を組み合わせことで、有利な条件で利益を確定する手法が使える。オプションは実に奥が深い、だから面白い。

■権利行使価格を超えてくると流動性が低くなる

買ったオプションを売却するタイミングとしては、主に①SQ日に自動決済させるか、②SQ前日の最終売買日までに反対売買(転売)するかの2つに分類できる。「10連休中の暴落をヘッジする」という目的だけなら、連休が明けたらオプションの役割は完了するので、その時点で含み益になっていれば売却してもいいだろう。5月限の最終売買日はSQ前日の9日。SQ前に反対売買するなら、5月7日、8日、9日の3日間に限られる。

思惑通りに日経平均が動くと、やがて権利行使価格に達する。権利行使価格と一致したオプションはATM(アット・ザ・マネー)、権利行使価格を超えたオプションをITM(イン・ザ・マネー)と表現する。特に権利行使価格を大きく超えてきたものは、頭にD(ディープ)を付け加えてDITMと呼ばれることもある。ITMになれば、本質的価値が発生するのでオプション価格は一気に増加する。その一方で、ITMやDITMのオプションは、市場で売買しにくくなるというマイナス面もある。

DITMのオプションが敬遠される理由は、デルタが1もしくは-1に接近すると、順行するにつれて実質持ち高が増えるというオプションの魅力が減るからだ。デルタの絶対値が1なら先物と同じ値動きになるので、あえてDITMを新規に売買する人は少なくなり、注文の板がスカスカになる。この状態で利益確定の成行売りを出そうものなら、とんでもなく安い価格で約定してしまう危険性がある。

■オプションと先物の関係を理解する方程式

これからオプションを始めたい人に、ぜひ覚えておいて欲しい方程式がある。「225先物の買い=コールの買い+プットの売り」、裏返せば、「225先物の売り=プットの買い+コールの売り」となる。この方程式をマスターできれば、オプションの理解がずっと深まる。「同じ限月」で「同じ権利行使価格」のコールとプットの買い・売りを組み合わせれば、実質、先物と同じになることを表している。冒頭で、日経225先物のことをあえて「別の投資商品」と表現したが、225先物と225オプションは密接な関係を持っている親戚みたいなものである。

では、思惑通りに日経平均が大きく下落して5P21875がDITMになって、買い板がスカスカになった場合、どうすればいいのだろうか。今のポジションは「5P21875の買い」である。ならば、「5P21875の売り」に相当するポジションをあらたに建てれば、両建てとなって利益確定したことになる。上記の公式「225先物の買い=コールの買い+プットの売り」の「コールの買い」を逆にして移動させると、「プットの売り=225先物の買い+コールの売り」に変形できる。つまり、5P21875を売却する代わりに、5月限先物ミニ10枚を買って、コール(5C21875)を1枚売れば、完璧な両建てが完成する。株価が21875円より大きく下がっているなら、5C21875はOTMなので、スムーズに約定できるはずだ。このように、先物とオプションを組み合わせることを、シンセティック(合成)ポジションという。

最初に建てた「5P21875の買い1枚」と、あらたに建てた「5月限先物ミニの買い10枚」、「5C21875の売り1枚」の合計3つのポジションはSQまで放置すればいい。自動的に決済されて理論値での利益確定が行われる。ラージ1枚ではなくミニ10枚にしたのは、オプションや先物ミニは毎月SQがあるのに対して、先物ラージのSQは3、6、9、12月の年4回に限られているためだ。取引しているのが6月限であれば先物ラージ1枚でOKだが、先物ミニは刻みが5円(ラージは10円)なので、成行買いする際に有利な価格で約定できる可能性が高くなる。

■実質持ち高が変化する性質を活かした売買

オプションでは含み益を一部確保しつつ、さらに利益を伸ばす方法もある。昨日の記事で紹介した、思惑通りに動くと実質持ち高がいい方向に変化するというオプションの特性を活かした売買である。原資産(日経平均)が権利行使価格に一致すると、プットのデルタは-0.5となり、実質的な持ち高は先物ラージ0.5枚(ミニ5枚)になると書いた。さらに権利行使価格を超えて日経平均が下がっていくと、実質持ち高はミニ6枚、ミニ7枚という具合に、プットを保有している人の都合のいい方向に変化する。

たとえば、購入したプットが権利行使価格を超えてきて、デルタが-0.6になった時点で一部利益確定したいなら、先物ミニ6枚を買って(デルタ的に+0.6)、デルタの合計値を0にするのである。この取引を「デルタヘッジ」と表現する。前述のシンセティックポジションと同じようなものと思うかもしれないが、決定的な違いがある。後から買った先物ミニ6枚は、日経平均がどう変動しようがミニ6枚で変わりがないが、持ち続けているプットはさらに日経平均が下がれば、実質持ち高はデルタの変化に合わせてミニ7枚分、ミニ8枚分と増える可能性がある。デルタが-0.8に変化したとすれば、ポジションは先物ミニ6枚の買いに対して、売りはミニ8枚分になる。実質持ち高をいったん0に調整したのに、さらに順行することで都合のいい方だけポジションが増え、利益が伸びたことになる。

デルタヘッジした後に相場が上昇に転じると、売りの実質持ち高がミニ6枚から5枚、4枚へと減っていく。オプション自体の含み益は減ってしまうが、ヘッジで買った先物ミニ6枚の利益が出るので、全体の利益はさほど減少しない。ちゃんと利益の一部を確保できたことになる。売りの実質持ち高が4枚に減ったところで、先物ミニの買いを2枚利益確定して4枚に減らすことで、再度デルタを0に調整できる。

デルタヘッジこそ、オプション取引の神髄ともいえるもので、これを自由自在に操れるようになれば、あなたも立派なオプショントレーダーである。今回の5P21875については、SQまでの残り日数が少ないので、デルタヘッジを行うのは難しいかもしれない。デルタヘッジを詳しく書くと長くなるので、日を改めて再度記事にしたい。