225オプションで億トレーダー(仮)になる目論見書

オプションの投資手法を学んで、億トレーダー(仮)を目指そう!

オプションの売りは損失無限大だから怖い?オプションを売ることの意味

オプションは売れば高い確率で儲かるという人がいる一方で、オプションの売りは損失が無限大なのでリスクが大きいと警告する人も多い。東日本大震災による株価暴落で、プットオプション日経平均を売る権利)を大量に売っていた人が莫大な借金を抱えてしまったという話は記憶に新しい。2015年に破綻したAIJ投資顧問は、預かった公的年金をオプションの売りで運用して、2003年から2008年にかけて500億円以上失ったとされる。オプションの売りは本当に怖いのだろうか?

■オプションは合理的なビジネスの契約

オプション取引の起源は、古代ギリシャ時代に遡る。哲学者ターレスは得意の天文学を駆使して、来年オリーブが記録的な豊作になると予想した。予想が的中すればオリーブ絞り機の需要が高まると考えた彼は、絞り機をリースする業者と交渉をして、来年に絞り機を借りる「権利」を売ってもらった。

ターレスは予想が外れても権利を放棄するだけで損失を最小限に抑えられるし、業者は先にもらった「権利料」を借り手がいなかった場合の維持費用にあてられる。お互いにメリットがある合理的なビジネス契約であることがわかる。翌年、予想通りにオリーブは大豊作となり、権利を行使して絞り機を調達したターレスは、高値で貸し出して大きな利益を得たという。

オプション取引では、買う権利を「コール」、売る権利を「プット」と表現する。前述の例では、ターレスは「絞り機を買う(借りる)権利」を買ったので「コールを買った」ことになる。一方、業者は「コールを売った」立場になる。ここで重要なのは、権利を売った側は義務が発生し、その義務の対価としてプレミアムと呼ばれる権利料を受け取るということ。業者は、ターレスに貸す分は確保しておかなければならない。プレミアムを先に払ったターレスには、絞り機を借りる権利があるからだ。

このケースでは、充分な数の絞り機が確保できているなら、業者側にリスクはない。権利を行使されても、手元にある絞り機を貸し出せばいいだけ。オプション取引は、コールやプットを売ることでどんな義務が生じるのかを正しく理解しておけば、決して怖いものではない。むしろ、とてもわかりやすい契約なのだ。

■オプションを売れば受け渡しの義務が発生する

日本取引所グループ(JPX)の大阪取引所で売買されている日経225オプションは、原資産が日経225指数(日経平均株価)ということもあり、実際の商品の受け渡しは行われず、毎月第2金曜日の始値から算出されるSQ値によって差金決済されるルールになっている。このルールが、オプション取引の本質を見えにくくしている面があるかもしれない。

原資産を持っていなくても売ることができる点では、株式の空売りやFXの売りとも共通している。投資経験のある人なら、「持っていないものを先に売って、後から安値で買い戻す」行為に違和感はないだろう。オプションは期限が来ると権利行使されずに価値がゼロになることも多いので、「オプションが0円になることを狙って売る」ことが大きなチャンスに見えてしまう。

JPXのサイトで公開されているオプション講座動画で、東日本大震災の直前にプットオプションを大量に売っていた投資家の事例が紹介されている。その投資家は、日経平均がおよそ10200円の時に、日経225を7500円で売る権利を1円で100枚売っていた。オプション1枚は日経225の1000倍なので、プット100枚売るということは「日経225を7500円で7億5000万円分買う」義務を負っていたことになる。その義務の対価して先に受け取ったのは、わずか10万円(1000円×100枚)。いかに割の合わない契約をしていたかがわかるだろう。この投資家が、あらかじめ7億5000万円を用意していたのなら問題はなかった。しかし、数百万円の証拠金だけしか用意していなかったので、含み損が証拠金を大きく上回ったところで強制決済されて莫大な借金が残った。

■「かぶオプ」ならオプションの本質が体感できる

JPXが提供している有価証券オプション(愛称「かぶオプ」)なら、オプション取引の本質を学びながら、オプションを売るメリットを体感することができる。売ったコールやプットが、期限最終日に権利行使価格に達していれば、実際に個別株の受け渡しが生じるからだ。コールを売るのはあらかじめ渡せる現物株を持っている人に、プットを売るのは現物株を権利行使価格で購入できる資金を用意している人に限られる。(権利行使されたくない場合は、期限日最終日までにオプションを反対売買して精算することも可能。)

かぶオプでは、取り扱い銘柄ごとに、オプションの種類、期限、権利行使価格別に売買が行われる。たとえば、「銘柄A、コール、5月限、権利行使価格1200円」という具合だ。コールのプレミアムを払うことで、5月の期限最終日に、銘柄Aを1200円で買う権利を手にすることができる。コールを売った人は、プレミアムを受け取る代わりに、権利を行使されると銘柄Aを1200円で渡す義務を負う。

株を持ったうえでコールを売る行為は「カバードコール」と表現される。保有する株の値下がりリスクを、コールを売ることで得られるプレミアムで一部カバーできるという意味だ。コールが行使されれば、自動的に利益確定されたことになる。一方、権利行使されるのを想定してプットを売る行為は「ターゲットバイイング」と呼ばれる。買いたい値段(ターゲットプライス)を権利行使価格に置き換えれば、プットを売る行為は、ターゲットプライスで買い注文を入れることに等しい。